ギャンブルについて考える その1

お正月三が日が早くも過ぎて、明日から診療を始めます。本年の短期目標として月2回のブログ更新を掲げたので早速書いてみました。

昨年からIR(統合型リゾート)推進法案について議論され、国会でも承認されました。日本において、いわゆるカジノが解禁されようとしつつあります。そのメリットして、さらなる海外観光客の誘致、カジノ運営に伴う大きな経済効果に期待があるようです。

結論から言うと私は反対で、今更そんなことをしなくても、と強く思います。日本には、人工的なリゾートに併設したカジノを作らなくても、北は北海道から南は沖縄まで、豊かな四季折々の自然があります。また1000年以上の歴史を有する国宝級の神社仏閣、美術品などが数多く残され、日本食ならびに日本文化そのものに、非常に高い関心と人気があります。従って、これらのものを大事に磨き上げていくことで、十分に魅力あるものになるでしょう。大きな予算をつけて実施するなら、そのような方向で使う方がよいと思います。

そして、カジノに代表されるギャンブルですが、すでに公営ギャンブルとして競馬、競輪、競艇、オートレースがあります。さらに建前は違ってはいますが、駅前から郊外まで日本全国どこにでもパチンコ屋さんが数多くあります。一般的な範疇では、賭けマージャン、賭けゴルフもあるだろうと思います。私自身ギャンブルはやりませんが、「これだけ身近にギャンブルが溢れているのに、これ以上カジノまで必要なんか?」というのが率直な感想です。カジノなればルーレット、ブラックジャック、そしてバカラ賭博など超高額レートでのギャンブルが、当たり前のように実施されるという環境が生み出されるでしょう。反対意見として治安悪化、ギャンブル依存症に対する懸念、対策の不備等が挙げられています。これに対しカジノ利用者の自己責任なので、責任が負えないなら利用しなければよいという理屈では通らない気がします。

私は数年前にチャンピックスという薬を服用して、禁煙することができました。喫煙習慣は、タバコに含まれるニコチンに対する依存症という病気であると認識され、チャンピックスなどの薬剤は、健康保険で治療ができます。絶大な効果に感心したため、当院でも院内、敷地内を含めて全面禁煙とし、禁煙外来も始めました。喫煙の悪影響は、内科的な呼吸器、循環器疾患だけでなく、椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患、腰痛にも悪影響を及ぼしているというデータもあるからです。整形外科診療においても取り組む理由、価値があると判断しました。

前述したように喫煙習慣は、ニコチン依存症という病気です。その依存症の原因となるタバコは未成年でなければ、スーパー、コンビニ、駅の売店、自動販売機など、どででも購入可能です。病気の根本的な原因であるタバコは、どこででも買えますが、治療薬であるチャンピックスは医師の処方箋が必要ですし、禁煙補助のニコチンパッチ、ニコチンガムなども薬剤師のいる薬局でなければ買うことができません。タバコの売り上げの一部が税収なのだとしても、病気の原因となっている、タバコ販売がほぼ無制限なのに、禁煙のための商品販売には、それなり以上に規制がかけられています。私は、長い間タバコを吸ってきただけに、その点には矛盾を感じています。ですからギャンブル依存症の問題と、カジノ解禁に関しても、同様の矛盾を感じるのです!

さて、皆さんはいかがでしょうか?本年も宜しくお願いします(^^♪

 

新年のご挨拶

明けましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いします。お正月の三が日は天候もよく、高松市周辺は穏やかな日和に恵まれたようです。1日は宇多津にある郷照寺へ初詣に行きました。大勢の参拝者で賑わっていました。今年1年無事過ごせることができるように、しっかりとお祈りをしてきました。

院長ブログは、案外読んでくれる方がおられて、励みになっています!!日常診療で感じること、時事ネタ、医療関連など、その時折で気ままな内容、文章なのは私のキャラクターのせいだと思いますが、お許しください。今年の目標は月2回のブログ更新を掲げていきたいと思います。

また診療に関しては2011年4月のリニューアル開院以来丸5年以上経過し、今年の4月からは7年目に入ります。本当に月日の経つのが早くて驚くばかりです。感覚的には2~3年ぐらいしか経っていないように今でも感じます・・・・

本年の診療開始は1月6日(金曜日)からです。介護保険に関連した通所リハビリの開始も同様になっています。これからも診療内容の一層の充実を目指して、従業員一同と研鑽と反省を怠らないように前進していくつもりです。今後とも宜しくお願い申し上げます。

 

高齢者ドライバーの交通事故

交通事故にも、色々あると思います。一昔前に重大交通事故といえば、交通マナーを無視した若者の無謀運転、暴走運転が問題視されていました。今でもなくなったわけではないでしょうが、若年者の車離れ、スポーツカーの売れ行き不振に表れているように、以前よりかなり減少しているのかも知れません。

私が免許を取得した30年ぐらい前の感覚では、飲酒運転に対しては甘々でした。泥酔運転は論外としても、多少の飲酒に伴う運転は、ドライバーがおのおのの感覚、判断に照らし合わせて、無理ならばハンドルを握らなければよいという考えがまかり通っていました。なので、飲酒運転で事故を起こす人は、その判断ができなかった人であるとか、飲酒検問で捕まるのは運が悪い人という、誤った認識があったように思います。しかし、飲酒運転に伴う、悲惨な交通事故の現実から、厳罰化へ舵が切られました。飲酒によるアルコールの影響は、注意力、判断力、とっさの身体能力などのすべてが弛緩します。なので飲酒をした際に、運転さえしなければ、このような事故が発生する根本原因が無くなるわけです。そういう意味では、飲酒運転の厳罰化は効果があったし、合理的と思います。

最近、高齢ドライバーの交通事故が連日のように報道されています。アクセルとブレーキの踏み違い、ブレーキをかけたが暴走した、高速道路の逆走、どこを走っているかわからなくなったなど、極めて深刻な状況、事故原因であると誰もが感じていることだと思います。これらの事故原因は、運転操作に必要な認知機能低下に起因しているのは明らかです。機能低下の原因は、身体の老化が主因ですが、ある意味、飲酒運転と同様の身体状態であるとも言えます。早急な対策が必要です。本当に病状の進行した認知症のドライバーに対して、事故後に飲酒運転のような厳罰を下しても、ほとんど意味はないと思われます。処罰を受けた理由や内容を理解できない人を処罰しても仕方ありません。また運転が危なくなるタイミングは、一気になるわけではなく、徐々に進行すると思われます。まずできることとしては、免許更新時の認知機能、身体機能のチェックを、今よりある程度厳格にするしかないと思われます。

現在は、ほとんどの自動車メーカーが、自動衝突防止装置を搭載する車を販売しています。その機構に関しては各メーカーでいくつか種類がありますが、安全性向上に寄与しているのは間違いありません。私自身はスバルの車に乗ってます。アイサイトが装備されていますので、その恩恵にあずかっているという実感があります。実際にこの車になって、私自身が追突事故を起こしたことは一度もありません。また新型の日産セレナは、高速道路でのハンドル操作も自動で行ってくれる、素晴らしく便利な車になっているようです。衝突防止から踏み間違い防止など、車の安全走行にかかわる根幹部分が、日本の工業力、技術力でさらに向上すれば、高齢者でも安心して運転できることが期待できます。ひどい記銘力の低下などがあればダメでしょうが、いくらかの身体機能の低下に伴う間違いを、車が自動的に制御できれば、高齢者ドライバーの交通事故は、減らせることが可能だと感じています。そして悲惨な交通事故が、起こらないことを祈りたいと思います!!

少し早いですが、2016年を振り返る

明日で11月も終わりになり、慌ただしく年末の時期になってきました。

毎日忙しく、バタバタ過ぎていく感じがするのは否めませんが、日々着実に過ごしていかなければと考えています。12月は忘年会シーズンですが、当院の忘年会も含めると6回の宴席に出席予定になっています。ビジネスマンの方々なら、もっと多い人たちもおられるかも知れませんが、職業柄、自分自身が健康で、元気に診療をあたることを主眼とするならば、月に6回ぐらいが、ほぼ限界の回数だと感じています。

さて2016年の出来事で思い出すのはリオデジャネイロオリンピックです!日本人選手団の活躍は、連日放送されテレビに見入ってました。柔道選手団の大活躍、体操ニッポンの金メダル、バトミントン女子ダブルスの金メダル、卓球男子の躍進、陸上競技の400メートルリレーの銀メダルなどなど、次の東京オリンピックが盛り上がること間違いのない、素晴らしい結果が出てました。

中でも私の印象に残ったのは、カヌー競技で羽根田卓也選手の日本人初の銅メダルです。高校を卒業後、単身強豪国のスロバキアに渡ってトレーニングを積み重ね、ついにメダルに到達したという、その根性、メンタルの強さは並大抵でのことではなかったはずです。そこまでカヌー競技に人生を賭けようと、判断したこと自体に驚くほかありません。私より20歳ぐらい年下の人ですが、凄い人だと思います。またメダルを確定した瞬間、カヌーに乗った大柄な外国人選手たちが、泣きじゃくる彼の周りを取り囲み、背中をさすったりして祝福する様子が放送で写し出されていました。スポーツマンシップの美しさ、オリンピック競技の感動が、あの一コマに凝縮されていました。

しかしながら、オリンピックの直前には、国家ぐるみでのドーピング違反が摘発され、ロシア選手の多くが出場停止の処分になりました。あれだけ反ドーピングが世界中で訴え続けられているにもかかわらず、ドーピング行為に手を染める精神構造は、理解しがたいものがあります。勝利と金メダルを得るという果実に付随するものが、あまりに大きくなりすぎ、ルールを逸脱しても、ばれずに結果を残した方がよいという価値観が強く蔓延しているのでしょう。プーチン大統領は激怒して「欧米の陰謀だ!!」と発言しましたが、結局は多くのロシア有力選手は出場できませんでした。

さて日本の安倍首相は、ロシアのプーチン大統領と本格的な北方領土返還交渉に入るようです。ここ最近になって、二国間協議での返還に関する日本側の要求は、なかなか厳しい見通しであることが報道されています。でも考えてみれば、スポーツの世界でも国家ぐるみでインチキしますし、国際ルールをいきなり無視してクリミア半島を武力で獲得するような国の大統領が、過去の大戦でボロ負けした日本から獲得した領土を、話し合いですんなり返してくれるとは到底思えません。なんだかんだと、ロシアにとっておいしい経済援助などを引っ張りだされた挙句、返すの返さないとうやむやになり、たいして特別な進展はなかったという結論に終わる気がしてなりません。

私ごときが心配することではないでしょうが、世界情勢も気にしたりしつつ、これからも生活していこうと思います。12月には今年最後の剣道公式試合があります。体調も万全に調整し、本番に臨んでいこうと考えています(^^♪

腰痛の薬物療法について

前回ブログ更新から、また随分と間が空いてしまいました。
1~2週間ペースで更新するつもりでもなかなかできません。

さて、はやくも11月半ばすぎです。12月に入ってからの出張脊椎手術のスケジュールも埋まりつつありますが、12月22日が今年の最終手術日になりそうです。
また年末年始の休診ですが、12月30日(金曜日)の午前中までの診療になります。30日の午後からは休診です。そして12月31日、1月1日~5日まで休診、年始の診療は1月6日(金曜日)から始める予定です。ホームページのお知らせ欄にもいずれ掲載されますが、よろしくお願いします!

腰痛ならびに整形外科的慢性疾患の患者さんを数多く診療している私ですが、40歳代後半の年齢になり、剣道稽古などで無理をすると、途端に腰痛が悪化するため悩んでいました。いわゆる急性腰痛症のように身動き取れないような激痛ではないですし、椎間板ヘルニアのような下肢への座骨神経痛、シビレなどはないものの、とにかく重苦しい痛みで、悪化してくるとその重苦しさ、痛さが増す感じでした。

スポーツ、ならびに日常の活動性に関係する痛みだろうと考え、ダイエットしてみました。効果はあって、痛みは少し楽になってきました。また剣道の稽古、手術などで長時間立ちっぱなしの際には腰部固定ベルトなどを使いました。確かに効果があり、腰痛は軽減しました!それでも時には、腰背部脊柱筋に局所的な強い痛みを生じることがあります。その際にはトリガーポイント注射を行いました。トリガーポイントはピンポイントで薬剤注入できれば、非常によく効くことを実感しました。

また運動の前後にストレッチをする。身体の柔軟性を保つような運動も取り入れていきました。動けないほどではないにしても、時には非常に強く感じていた腰痛は徐々に軽減しましたが、無くなったわけでもなく常に持続している状態でした。いわゆる慢性腰痛というものか・・・うまく付き合っていくしかないな、と思っていました。ただ、剣道稽古の回数が増えたりすると、すぐに痛みが増してくるのが困るところです。

そこである製薬メーカーから販売されている痛み止め、慢性的疼痛に効果があるといわれているアセトアミノフェンとトラマドール塩酸塩の配合錠である薬剤を服用してみました。もともと服用の初期段階で吐き気、嘔吐、便秘などの副作用があるため飲むことをやや躊躇する面があったのですが、処方した患者さんには明らかに疼痛が軽減した方もかなりおられたので、私も服用してみました。
結論から申しますと「確かに効く!楽になるな~」というのが実感できます。
気になる副作用は私の場合は全くありませんでした。
これからも腰痛を乗り越えながら頑張っていけそうです(^^♪

健康保険制度における正しい診療とは?

今回のブログは、やや堅苦しい内容になりますが健康保険制度に基づいた診療について述べたいと思います。私自身の経験、時代的背景も考慮したうえでの意見ですが、あくまでも個人的意見であることを最初にお断りしておきます。

開業して早くも5年以上経過しました。様々な患者さんとの出会いがあり、本日まで診療を継続しております。ふと考えると、のべ人数で見れば、膨大な数の患者さんを診療してきたと思われます。外来診療の現場では、様々な受診動機で患者さんが来院されます。最も一般的なのは、「何らかの疾病、怪我などの診療をして欲しい」という患者さんです。ほとんどがそういう方々です。正しく診断し、外来通院で治療、症状緩和のための手当てを受ける、または手術が必要な疾患なので、私自身が院内で日帰り手術もしくは出張手術で治すという場合もあります。また最初に当院を受診したが、実は他科領域の疾患なので、該当する診療科(内科、脳神経外科、耳鼻科、泌尿器科など)へ紹介することもあります。さらには、当院で診断し治療もできることを説明した後に、患者さんの希望により他施設の整形外科などへ「手術適応があり、貴院での治療を希望されています」と、紹介状を添えてお渡しすることもあります。

これらの診療行為がすべて健康保険で賄われていることは普通のことですし、何ら問題はないと思います。しかし、以下の場合はどうでしょうか?いくつかの同様のパターンの患者さんの平均像を示してみたいと思います。どのような感じかと言うと・・・

➀1~2年前もしくは数か月前から症状が続いている。
➁主要な症状、痛みなどは、よくなったり悪くなったりを繰り返している、もしくは徐々に悪くなったような気がする。
➂これまで知人に相談したり、医療機関を複数(3か所以上)受診したりしている。
➃受診した医療機関において治療したが、良くなったとは思えない、また説明もよくわからない。
➄治療方針として、手術治療の説明を複数の医療施設の医師から聞いているが、不安なのでもっと色々話や説明を聞きたい。
➅数か月以内から受診直前までに複数回のXP撮影、MRI検査など各種画像診断を既に受けている。
➆とにかく、もう一度MRI検査をしてほしい。

さらに付け加えると・・・

➇住所が遠方であり、これまでの受診歴は一切なく、実際に通院はできないし、そのつもりもない。
➈仮に明確な治療方針(手術治療など)が示されても、本人には私の治療、手術などを受ける考えは持っていない。

などの特徴が挙げられます。特に考えてしまうのが「とにかくMRI検査をしてくれ」という検査のみを希望するの患者さんへの対応がどうあるべきかといつも考えています。MRI検査は確かに非常に優れた画像診断です。しかし、MRI検査をしたら病気が治るわけではありません。あくまでも臨床症状、兆候から疑われる疾患を素早く正しく診断するツールであり、それを基に有効な治療方針を立てたり、治療効果を判定したりしています。したがって、ほぼ間違いのない診断がなされた慢性的疾患で、同じ部位のMRI検査を繰り返して行うことに大きな意味は見出せません。そのような患者さんには何度も「かなり最近のMRI検査データがあるようなので、前の施設でデータを渡してもらったらいいでしょう。それらのデータを見たうえで必要であれば、それから検査を考えてみてはどうですか?」とか、「おそらくMRIを撮影しても、前回と大差ない検査結果になる可能性が大きいです。結局、費用も時間も無駄になってしまう可能性が高いですよ」と説明しています。

それでも、「必要な検査料金、診療料金をはらうので兎に角MRI検査をして下さい」という方々には、どのようにすればよいのでしょうか?私は「保険診療で扱うのは不適切である」と考えています。保険診療制度は、広く薄く徴収した社会保険料加え、皆保険を維持するために莫大な公費が投入され、現在の国民皆保険制度が成り立っています。自己負担分を支払っても、大部分は健康保険から診療費用は支払われています。前述したように、MRI検査は正しく診断し治療方針に役立てるツールであり、これらの特徴を示す方々に検査をしても、検査だけで終わってしまうのです。

言われるがままに検査をオーダーするのは、医師としてとの診断的思考回路を放棄することにもなりますし、フリーアクセスの原則(医療機関を自由に選べる)も含めた現行の医療保険制度を壊すことに繋がる行為としか思えません。従って、どうしても検査を希望する方には、百歩譲って「すべて自費(自由)診療であれば仕方がないのかな・・・」とも考えています。実際に自費診療として検査を受けた方もおられます。その際、検査によって新たな病態が発見されたとか、やはり治療には手術が必要な状態なので、本人が納得して私の治療を受けることになると、どうなるのでしょうか?その後の治療に健康保険が使われる場合、混合診療に該当するのでしょうか・・・?答えは、これまでの経験において、そのような判断で悩まなければならなくなった患者さんは、1人もいませんでした。
そういうことなのだと思います。

なにかご意見、ご感想があれば是非お寄せいただけたらと思います!

私がやっている剣道について

またまたブログ更新が大幅に滞ってしまいました。
前回では、圧迫骨折に対する手術治療について述べて、その続きを・・・となっていましたが、少し趣向を変えて内容を綴ってみたいと思います。

私の剣道は中学生から始めました。その後高校~大学生まで12年間続けていましたが、競技剣道として見た場合、特に目立った戦績がないのは言うまでもありません(笑)!ただし、幸運にも中学、高校、大学と常に剣道専門家の指導者が身近にいる環境で稽古をすることができました。当時はよく分かっていなかったのかも知れませんが、振り返ると大変恵まれた環境であったと思われます。

学生時代の川崎医大剣道部師範は三宅大五郎先生でした。先生は明治期に設立された京都の大日本武徳会武道専門学校のご出身でした。便利なwikipediaで見ると・・・「旧制高等学校にも匹敵する教科教育と、時には死者すら出ることのあった激しい稽古が行なわれ、東京高等師範学校、日本体育専門学校、国士舘専門学校と並ぶ、国内屈指の武道家育成校であった」とあります。時には死ぬことある(いったいどんな稽古だったんでしょう?)とは現代では想像できない世界です!

しかし、三宅先生は細かい技術論はさておき、常の稽古では本気で私を含めた剣道部員に稽古をつけてくれていました。あくまでも全く敵わない先生にまっすぐ懸かっていく稽古でしたが、少人数のためか一度の稽古に2回ぐらいは稽古できたのです。「渋谷君、もう一度きなさい」という先生のお声が今でも耳に残っています。医科大学剣道部の稽古なので、根本厳しくないし、厳しくやりようもない部分があったのですが、地道に続けていると高校時代の剣道とは異なったスタイル、技の幅に少し広がりが出てきました。また、それにつれて中四国医科学生剣道大会、西日本医科学生剣道大会などでも試合に勝ちあがっていけるようになりました。

剣道部主将の役割も経験し、大学3~4年頃は、師範の三宅先生に数多くお話を伺う機会が増えました。結果としては過去何年かを含め、大会の戦績が低調低迷していることについての苦言を示されました。医科大学剣道部では、どうしても全員が剣道歴が豊富なわけでもなく、時には大学生になってから剣道を始めた先輩が主将を務めていた時期もあります。「何となく稽古して、何となく大会に出場する姿勢ではダメなんだ。大会での結果を求める!」これをスローガンにして主将権限も活用し、部内の試合出場メンバーの選考方法、普段の稽古内容、試合前合宿の内容を変更し、試合対戦相手の事前分析の徹底などを取り入れていきました。

やはり考え方、取り組み方法を改めると、普段の稽古もメリハリのきいた充実した内容になりますし、試合の結果も勝利という形が得られるようになってきました。そもそも同じ医学部もしくは医科大学学生同士の試合、大会ですので稽古環境、稽古にさける時間などがイーブンな相手に対し、きっちりした考えもって勝ちにいけたという事実は、私にとって大変貴重な経験になりました!

そんな学生時代が終わって25歳の春に医師国家試験に合格後、さっそく香川医科大学(現、香川大学・医学部)整形外科で研修医としての生活がスタートしました。これが想像以上に厳しい生活の始まりでした。毎日がきつくて、病院で合宿みたいな感じす。同期の新米ドクター4人と四苦八苦しつつ、時には言い合ったり、助け合ったり、慰めあったりしながらの超長時間勤務に従事していました。患者さんの診察ももちろんやりますが、ほとんどが先輩、指導医からの指示で膨大な雑用と、急な学会発表を指示されたりして、その準備などに追われていました。残念ながら剣道をやる、やりたいという感覚は数年間のうちには全くなくなってしまいました。

そして、あっという間に25年近く経過して現在に至るわけですが、約2年半ほど前から剣道を再開しました。「剣道やってみてどうなの?」と聞かれたとすれば、「もう一度やるようになって本当に良かったと思う」という答えになります。再開して6か月後には初回の四段昇段審査で合格することができました。日々の診療、実務を別として、ここ数年来で最大級の達成感を感じ得ることができました。巡り合えた新たな指導者の先生、剣友の存在は非常にありがたく、感謝の気持ちしかないと思っています。剣道自体には、日本の伝統芸能文化的側面があり、大人の剣道では身体的能力、竹刀操作の技術、これに加えて相手との理合(わかりやすくいえば駆け引き)が、より重要視されます。ここが難しいところなんですが、理解して実践しようという心がけのあるなしが大事なところです。

そして実際の自分の本業にも通じることもあり、さまざま感じることも増えてきました。折に触れ、これらの部分もこのブログで述べていこうと考えています。どうかお付き合いください♪
では

脊椎圧迫骨折の治療について

脊椎圧迫骨折は以前から日常診療でよく遭遇する高齢者の代表的疾患でした。20数年以上前は痛みが強ければ3週間前後安静目的で入院、その後痛みが取れて来たら徐々に離床を始めて、あまり痛くなくなったらコルセットを着けて2~3か月は無理をしないという方針で大多数の患者さんに対応していたように思います。その後はビタミンD製剤を処方するぐらいで、それほど熱意をもって診療されていない雰囲気が目立っていたような気がします。

その後、時々受診される患者さんの中に骨折してからけっこう時間も経っているし、椎体変形はあるけれど痛みは治まって来るはずの時期なのに、時折頑固な痛みが持続する高齢者の方もおられました。この頃話題になり始めていたのが、「圧迫骨折後に生じた椎体偽関節に続発する遅発性脊髄麻痺」という病態でした。第12胸椎~第1腰椎などの力学的に負荷がかかりやすい胸腰椎移行部に発生するのが特徴です。後方から広範囲に神経除圧、金属スクリュー固定を併用した場合の手術成績はさっぱり駄目で、前方支柱再建を主軸においた開胸~前方アプローチの手術方法が非常に注目を集め、その理論と手術成績も含めて素晴らしいものがありました。またやや遅れてこの病態に対して後方から経椎弓根的に人工骨ペーストを注入する方法も報告され始めていました。

これらの手術方法があるのは理解はしていましたが、「あくまでも椎体偽関節を生じ、更に脊髄麻痺をきたせば手術適応であろう」と考えていました。それ以外の患者さんには、「痛みが続いていても骨がつぶれて変形がひどいし、仕方がないでしょう。年齢的なこともありますし、痛みに応じて生活してください。痛み止めと骨がしっかりする骨粗鬆薬を処方しておきますので・・・」という説明をしていたことが多かったように記憶しています。また私だけでなく当時の先輩~同僚の医師たちも似たりよったりの対応をしていたと思われます。

今から10年以上前ですが一人の患者さんと出会いました。出張診療先での診察をした70歳前後の女性でした。持病もなく比較的元気な方でした。「3か月以上前からずーと痛みが続いている。近くの病院で圧迫骨折の診断を受けました。でも良くならないのです」と話されていまいた。「特に寝起きの際、動作の変わる瞬間にものすごく痛い」という話も聞きました。診察したところ腰椎のほぼ一定部位に叩打痛があり、痛くて腰を伸ばす動作がとても困難な様子でした。下肢のしびれ、麻痺症状は全く認めませんでした。XPの側面像は椎体の楔状変形と椎体高の減少した圧迫骨折と見立てました。MRIでも神経組織障害の心配はない所見でしたので、いつもの圧迫骨折における一般的な治療方針の説明を行いました。

その患者さんは、いくつかの医療機関を回って同じ様なことを言われていたようですが、食い下がるように訴えるわけでもなく、あきらめるような感じでもなく、淡々と毎週1回の私の外来を受診されていました。そして「この頑固で本当に痛くてどーしようない腰痛を何とかできないのですか?」と受診の度に地道に尋ねられるのです。
通常下肢の筋力が正常であれば、脊椎XP写真は立位で撮影しています。ある日もしやと思い、あえて撮影台に仰向けに寝てもらいました。さらに痛みのある部分の背中にこんもりと枕を入れて、痛みはやや生じますがエビぞり姿勢を保ってもらい、XP側面像を撮影しました。すると楔型に前方部分が潰れていた椎体が、もとの形に戻るぐらい形状変化するのです。椎体内部に大きな空洞も出現していました。「このような椎体偽関節があるんだな。患者さんはそりゃ痛いだろう、しかしこういう撮影をしないと気付くことが難しく、もしかするとこれまでにもこんな症例が結構あったのかも知れない」と強く思いました。患者さんは医者にいろいろ教えてくれるありがたい存在(教師)なのです!

診断は「脊椎圧迫骨折後に生じた、著しい椎体不安定を呈する偽関節」ということになり、神経麻痺症状はありませんでしたが、手術適応があると私は考えました。そのためにどのような手術方法が低侵襲で合理的かつ最大の治療効果を得られるのかをしばらく考え、香川大学病院に入院してもらいました。信頼して任せてくれた患者さんの期待に何としても応えたい!と強く感じていたました。そして、これまで当病院では行われたことの無い、新しい脊椎手術方法に挑戦することになったのです!

この続きはまた次回ブログで更新したいと思います。

久しぶりにブログを更新します!

ブログのログインの際に必要なパスワードなどを度忘れして、そのままズルズル更新することなくきてました。パスワードも判明したので、さっそく書き込んでみたいと思います。

ここ最近の診療で感じるのは、高齢患者さんの一層の増加です。高齢者の定義は、私が医師になりたての頃は65歳以上でしたが、現在は75歳以上とするのが妥当なのでしょう。60代後半~70歳前後であれば、膝や腰に不調があっても基本的に元気で活動性の高い方が多いです。

整形外科の中で私が専門とする脊椎脊髄外科領域では、以前からよく見られた病態ですが脊椎圧迫骨折が非常に多いです。当然、骨粗鬆症を基盤しており軽微な外力で発生しています。腰痛~背部痛の発生時期がある程度明確で、患者さん自身が痛くなったきっかけを認識しており、2~3週間たっても良くならなず、もしくは痛みがひどくなってくる。また体勢の変化(寝ている状態から起き上がる際)によって、痛みが増悪するような方は、新たな脊椎圧迫骨折を高率に生じていると思われます。

診断は単純XP撮影で、椎体の変形、圧潰などがあり画像的に骨粗鬆化も進行していれば診断自体は難しくありません。しかし、すでに椎体骨折の既往があり、複数箇所で椎体変形が目立つ際には、どの椎体が新規に骨折したのか非常に分かりにくいことがあります。また、椎体の変形、圧潰がそれほど目立たない時期に受診された方であれば、「XPでは異常がありませんね」ということになってしまいます。

このような場合、当院ではMRI検査が可能ですので飛躍的に診断精度が向上します。圧迫骨折があれば椎体圧潰が全くなくても撮影範囲内に骨折部位が含まれていれば見逃すことはまずありません!診断するうえでは非常にありがたい検査だと痛感します。治療については、近年では骨形成を増強させる骨粗鬆薬も登場し、私が新米整形外科医の頃とは治療方針、治療法の選択に格段の違いがあります。

また、詳しい治療の内容については次回の更新で述べたいと思います!

小保方さんの手記について思うこと

小保方さんが手記を出したようです。ご存じの方も多いでしょう。私は読んでいませんが、今後も彼女の書籍を購入することもないと思います。報道されている限りでは、不正と判断されたデータに関しては今でも単なる勘違い、間違いであり、STAP細胞があると信じているようです。

実験データにおける数々の疑義については知られている如くですが、特に早稲田大学の博士論文に使われていた蛍光顕微鏡組織写真が、Natureに掲載された論文において、そのまま使用されていたことは本当に驚きました。少々ですが研究に携わった私の経験からも、あり得ない間違いだと思いました。彼女は相変わらず「単なる取り違え」と主張していますが、信じてもらえなくても当然でしょう。

小保方さんのことは別にして、なぜこのような研究不正が起こるのでしょうか?その理由として最近よく語られるのが、「研究機関の競争・市場原理が強くなったことによる競争の激化」、「加熱した競争が与える研究者に対する心理的圧迫」などが挙げられています。不正にはいくつかのパターンが存在し、詳細は省きますが、かなり以前から今日に至る研究の歴史において存在しています。近いところで、医療の実臨床に強く関わる研究不正では、降圧薬バルサルタンの臨床研究において、データが人為的に操作されていた事件がありました。ですが、これ以外にも調べたら本当に数多く出てきます。

私には、単に研究の競争激化が原因とは思えないのです。研究不正は発覚しても刑務所に行くことは通常ありませんが、研究者communityにおいては重大な犯罪行為とみなされているはずです。また、一般的な世の中でも様々な犯罪があります。重大犯罪には殺人が挙げられます。誰でもそう思っています。ものすごく腹が立って「こんちくしょー、殺してやる~」となっても、思うだけなのと、実際に殺してしまうのでは天と地ほどの差があります。普通の人はその境界が明確で、踏み越えることがないのです。従って、研究不正に邁進してしまう人は、そういう意味での境界を平気で踏み越えることができる人だとも言えます。

研究不正にも殺人事件にも、その動機に深く横たわっているのは、おそらくむき出しのエゴでしょう。些細なことから大きなものまで、誰にでもエゴはあります。いかに自分で上手くコントロールできるかが重要です。おそらく研究の世界だけの問題ではないのだと感じています。