
椎間板ヘルニア
背骨の間でクッションの役割を果たす椎間板という軟骨組織が正常の椎間腔を超えて突出した状態で、
腰椎椎間板ヘルニアは、下位腰椎 (L4/5, L5/S1) が多く発生します。また頸椎にも発生することがあり、
まれではありますが、胸椎レベルでもヘルニアを生じることもあります。最新の研究では、腰椎椎間板
ヘルニアの発症原因の一つとして遺伝的要素が関連していることも明らかにされつつあります。
腰椎椎間板ヘルニアの代表的症状は、片側の下肢痛が多いが、比較的大きなヘルニアでは、 両側で症状が出現することもあります。
下肢痛は、飛び出したヘルニアによる神経根への圧迫刺激 によって生じます。いわゆる坐骨神経痛と
して患者さんは訴えることが多く、障害領域に感覚障害(しびれ感、感覚が鈍い)、運動麻痺(足に力が入らない)などの神経麻痺症状を生じることもあります。
上位腰椎椎間板ヘルニアの場合、腰痛(L2障害)や股関節周囲の痛み(L3障害など)を生じる場合があります。若年性椎間板ヘルニア(中学〜高校生)は、椎間板内圧が高く、高齢者に比べ、強い症状を
呈しやすく、下肢挙上時の神経根刺激症状の反応が強く出やすくなるようです。椎間板ヘルニアとほぼ同様の症状を示す他の病気として「脊髄腫瘍」があります。私の経験でも頻度は少ないものの、軽度のヘルニアとしては症状が強いため詳しく調べたところ、脊髄腫瘍が合併していた症例を経験したことがあります。
治療においては、無症状の椎間板ヘルニアが知られているように、椎間板ヘルニアは、その症状によって治療法が決定されます。
たとえ画像検査で大きなヘルニアがあるからと言って、手術治療が必要になるとは限りません。
椎間板ヘルニアの治療は、原則的には保存療法がまず選択されます。
これには、鎮痛剤、牽引や温熱療法などの理学療法があります。
さらに、神経ブロック療法(神経根ブロック、硬膜外ブロック等)を症状に応じて実施します。
手術治療については、一般に排尿障害、著しい筋力低下が絶対手術適応とされています。
このような症状の方の中に、意外と痛みの訴えが少ない患者さんもおられますが、神経麻痺症状が重症であれば早めの手術治療をおすすめしています。
また、各種の鎮痛剤、神経ブロック療法などの効果が乏しく、常に激しい痛みを伴う場合も手術治療を早めに行ってもよいでしょう。
坐骨神経痛が主な症状で、就労もしくは就学、日常生活動作の制限が2〜3ヶ月以上持続する場合は手術を考えてよいでしょう。
手術法はいくつかありますが、基本は飛び出した椎間板ヘルニアを摘出する方法です。
私が行うヘルニア手術は内視鏡(MED)もしくは顕微鏡を使用した低侵襲手術を実施しています。
メリットとして切開が小さく、出血もごく少量で、術後の創部痛も少なく、入院期間も短くてすみます。
その他レーザー治療や経皮的椎間板ヘルニア摘出法がありますが、有効率がどうしても低く、適応が限られ、
保険適用除外で高額な医療費を自己負担せざるを得ないため、現在のところ当院では行っておりません。
より侵襲の少なく、効果が確実な手術方法の開発が待たれるところです。
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