
脊椎圧迫骨折後に生じる椎体偽関節について
単なる脊椎圧迫骨折と異なり、椎体偽関節と呼ばれる病態があります。多くの患者さんの圧迫骨折は、
変形はしてしまいますが、通常は1〜2ヶ月程度で固まってきます。
しかし低頻度ながら、いつまでも背骨が固まらず、長期間強い痛みが持続する方も存在します。
このよう場合、圧迫骨折後の椎体偽関節を疑って診断をすすめる必要があります。
椎体偽関節では極度に進行した骨粗鬆のため、骨折治癒がうまく進まず、内部に空洞が形成され
水分が貯留している状態が観察されます。X線上、一見潰れた形で固まって見えても、姿勢、
体勢が変わるたびに、骨折した骨がグラグラ動いています。
このため、いつまで経っても強い腰背部が持続することになります。
また、潰れた椎体の後方部分が突出して、脊髄神経を圧迫刺激することもあります。
これにより骨折後しばらく時間が経ってから、下肢の筋力低下、歩行困難、臀部から下肢にかけての
シビレや痛み、排尿障害などを呈することがあります。これを遅発性脊髄神経麻痺といいます。
この状態に対しては、骨粗鬆の薬物療法での改善は期待しがたく、時期を逸せずに手術的治療が
必要になります。手術は3〜4センチの小切開で行います。
椎弓根という場所に小さな穴を開けて、偽関節となった椎体空洞部分と交通させます。
その上で骨ペーストと呼ばれるセメント状の人工骨を注入し、グラグラの椎体を固めてしまいます。
高齢患者さんにとっては、体の負担も小さく、痛みもよく改善するため優れた治療法であると
考えられます。排尿障害、進行した筋力麻痺は回復に時間がかかるため、適切な治療方針決定が
重要になります。
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