
腰部脊柱管狭窄症について
腰部脊柱管狭窄症は、近年の高齢化社会を反映し、60〜65歳以上の慢性腰部疾患としては非常に
頻度の多い病気の一つです。原因として加齢による脊椎骨の変形により、腰部での神経の通り道で
ある脊柱管が狭くなり、脊柱管の中を通る、足へ向かう神経を圧迫することによって生じる疾患です。
このため腰痛や、下肢のしびれ、坐骨神経痛などが典型的な症状で、10分程度立っていたり、
歩いたりすると症状が出現し、座ってしばらく休むと症状が和らいで、また歩けるようになる、
というのが典型的な症状です(間歇性跛行と言います)。
上記の特徴的な症状に加えて、脊椎専門医が診察すれば神経学的所見から、ある程度障害範囲が
推定できます。さらに腰椎のX線、MRI検査が有用で、熟練した医師がみれば、ほぼ確実に診断をする
ことができます。腰部脊柱管狭窄症は、加齢に伴って進行する病気であり、症状の強さに波があり
ますが、狭窄した脊柱管が自然に拡大することはありません。急激に症状悪化することはまれですが、
全体としては、時間とともに徐々に症状が悪くなることの方が多いと思われます。
治療に関しては、まずは薬物療法、神経ブロック療法、理学療法などの保存治療を行います。画像上、
脊柱管の狭窄が高度であっても、症状の改善が良好なことは珍しくはありません。当院でも1日のべ
10人以上の患者さんに硬膜外ブロック療法を行うこともあります。基本的に保存治療で症状の改善が
得られている、また明らかに症状の進行がない時期では様子をみても大丈夫でしょう。
ただし、神経ブロック療法などを行っても、ごく短期間の痛みの軽減しか得られない場合、下肢の筋力
低下、麻痺症状が目立つ場合、排尿障害が進行している場合には早めの手術治療に踏み切るほうが
よいと考えられます。
腰部脊柱管狭窄症の手術方法は、椎弓切除術と呼ばれているもので、脊椎の後ろ側の椎弓を切除する
事によって脊柱管を拡大し、神経の圧迫を解除します。手術としては以前から行われていたものの、
最近では、より低侵襲な方法が主流となっています。
小さい皮膚切開で術野を顕微鏡、内視鏡もしくは手術用ルーペなどで拡大して手術を行います。
最小範囲の骨切除で確実かつ有効な神経除圧が可能になっています。
もちろん出血量も少なく、輸血することはまずありません。術後の臥床期間も1〜2日間と
短くなっています。
すべり症などを合併し、狭窄に加えて脊椎構造が不安定と判断される場合には、椎弓切除による
神経除圧に加えて金属スクリュー固定を併用した手術を実施することもあります。以前の手術では、
かなり大きく切開し、出血量も多くなることがありましたが、最近ではこれらの手術も低侵襲化が
図られています。
以前は固定のための骨移植にあたって骨盤から採骨していましたが、現在ほとんどの症例で、
椎弓切除した骨を利用して骨移植を行います。
このため術後に採骨部痛などの余計な痛みに悩まされることも無くなりました。
これらの手術は、いずれも私が数多く取り組んできた手術であり、希望する患者さんには、院長が責任を
持って出張手術を執刀しております。
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